10/12に上陸した台風19号は各地に甚大な被害を残していきましたね。
まだ全体像は見えていないものの、15日時点で50人以上の死者・行方不明があり、47河川66箇所での決壊があった様子。
近年の台風にしてはかなり大きかったのではないでしょうか。
被災地域やそこに住まわれている被災者の方々の早い復興を願います。また、亡くなられた方のご冥福をお祈りします。
さて、今回のメインの話題へ。
このエントリを書こうと思ったキッカケ
台風が過ぎ去ってのんびりとtwitterを眺めていたらこんなTweetを見かけた。
あああああこれめっちゃ読みたいのでどなたか……!!! #技術書典 https://t.co/5fpyaxzbhJ
— Aki (@nekoruri) October 14, 2019
「あー、(ブログやLT)ネタとしてちょうどいいなぁ。」な感じでTweetした ら、友人から「やらないの?」というリプがあった。
やらないの…?(読みたい
— あおい (@_a0i) October 14, 2019
いわゆるミーハーかもしれないですが、治水事業の大事さがわかったので興味ありますね
— あおい (@_a0i) October 14, 2019
今回ネットで色々な情報が飛び交ってるので知りたいというのもあります(自分で調べろよって話かもですが
このやり取りのあと構成考えていたら会社の同僚からも言われたので書いた。
自分の知識整理にもなるからね、ちょうどいいよね。
技術書典には出す気力がないので電子版でもう少し掘り下げたのを出すかもしれない。乞うご期待。
治水設備の種類
「治水設備」と一言で言っても役割によっていくつか種類がありそれぞれに担っている役割が異なる。
一番身近な治水設備としては「堤防」、大雨時に活躍する「ダム」「遊水地」などがある。他にも「水門」や「堰」、「調整池」などがあるが今回は割愛する。
堤防
堤防は平常時は遊歩道や車道など生活と紐付いて使用されているが、洪水時には川の水を受け止め堤防内を守ってくれる。川と生活圏の間にある壁のようなものであり、川が多少増水しても問題がないのは堤防の働きが大きい。
堤防はダムのような調整機能は持っていないため、川の水位が上がり続けると為す術もなく、水が堤防を越える越水や堤防が破壊される決壊が起き、生活圏内に水が流れ込む。流れ込んだ水によって住居や家財道具は破壊される上に、水に浸かった部分の消毒・撤去などで甚大な被害が出る。
水が越えない限りはとても頼りになる設備である。
遊水地
遊水地は漢字のまま「水を遊ばせる地」である。人工的に氾濫を起こし、下流域の洪水被害を軽減させる目的で設置される。関東圏で有名な場所としては渡良瀬遊水地がある。遊水地の名前はないが鶴見川沿いの新横浜公園も遊水地としての機能がある。
氾濫原としての機能上、人が定住することは難しく、動植物にとっての楽園になりやすい。渡良瀬遊水地はラムサール条約の登録湿地になっている。
ダム
川を堰き止め人造湖を形成し、平常時は産業用水や発電、大雨時に洪水調整に使われる多目的な土木構造物。治水設備としては最大規模になる。その規模から国家プロジェクトとして進むが、ダムが形成する人造湖に水没する住民との補償問題、多額の税金を使うことになるため政治問題の道具に使われることが多い。民主党政権時に話題になった八ッ場ダムはまさにその典型で政治問題として使われたために竣工まで数年遅れる事態になった。
近年ではダム湖周辺に散策路やキャンプ場を設置して観光地化したり、ダムカードを配布して訪問者を増やしたりと親しみやすい施設となってきている。
治水設備の役割
大雨時の各治水設備はそれぞれが連携して洪水を防止する。
降雨前
上流域にあるダムは降り始めまでに貯水率を下げ、降雨時に水を貯められるようにしておく。
降雨初期(〜6時間)
ダムはダムへの流入量より少ない水量を下流に流し、徐々に水を貯め始める。遊水地、堤防はこの時点では通常時と変わらない。
降雨中期(〜12時間)
ダムの貯水率とダム上流域での降水量、河川の流入量を勘案しつつ、徐々に放水量を増加させる。中流域では徐々に河川の水位が徐々に増加し始める。
さらに降水量が増え、ダムからの放水量が増加すると、中流域では氾濫危険水位まで増水し堤防が壁となり、住民の生活圏を守る。下流域でも水位が増加し始める。遊水地では水が貯まり始めるのもこの頃。
降雨最盛期(〜18時間)
ダムの調節機能が麻痺し始め、ダム崩壊の可能性が出た場合、流入量と放水量を同量にする「緊急放流」が行われることがある。降雨中期のような水位調節ができなくなり、ダムとしての機能を失った状態であり、放水量を増やすわけではない。
ダムが緊急放流を行った場合、中下流域では川の水位が急激に増加する。流域周辺にある遊水地や調整池でも貯水が行われるが、それでも処理しきれず水位が増加し続けると、水が堤防を越える越水が起き、生活圏内に水が流れ込む。その後堤防が水に削られて弱くなり水圧に耐えられなくなったときに堤防自体が崩壊する決壊が起き、広範囲の周辺流域が水没する。
降雨後
降雨が落ち着いてくるとダムは放水量を徐々に減らしていき、通常時の放水量に戻していく。遊水地や調整池に貯水した水も徐々に下流へ流し、通常時の水位に戻していく。河川の水位はすぐに下がらないが、2-3日で通常時の水位に戻る。
越水・決壊が起きた地域ではポンプによる排水が行われる。堤防は応急処置が行われる。
こんなんでいいのかな
すごいざっくりとしたものになってしまったけど、基本的に抑えておくところは抑えたつもり。
ダムはもっと掘り下げることができるので別エントリ。一級河川によって対策の取り方とかも違っているのでそういうところを掘り下げたのは電子版で書く予定。
アウトラインだけでもかなりなボリュームになったから、年始に出せればいいよなぁくらいの感覚。
名古屋への道中で寄ったダムの話も書かないと…